この記事では、築25年のRC造アパートを10年間保有し、売却するケースの収支をシミュレーションします。単年度のCFだけでなく、減価償却・税金・売却損益を含むトータルリターンを計算します。
物件の前提条件
物件種別: 一棟アパート(8室・1K)
構造: RC造(鉄筋コンクリート)
築年数: 築25年
物件価格: 3,000万円
月賃料: 1室あたり月5万円(8室合計 月40万円)
年間GPI: 480万円
表面利回り: 16%
エリア空室率: 8%
融資条件:
借入額: 2,400万円(LTV 80%)
金利: 2.5%
融資期間: 22年(法定耐用年数47年 − 築25年)
ADS: 約141.9万円/年(月約11.8万円)
自己資金: 600万円 + 諸費用150万円 = 750万円
減価償却:
建物価格: 2,100万円(物件価格の70%)
残存耐用年数: (47 − 25) + 25 × 20% = 27年(簡便法)
年間償却額: 2,100 ÷ 27 = 約77.8万円/年(定額法)
年間収支(ベースケース)
GPI: 480万円
空室損(-8%): -38.4万円
貸倒損(-1%): -4.8万円
EGI: 436.8万円
OPEx:
管理費(5%): 24万円
修繕費(7%): 33.6万円
固定資産税: 15万円
保険: 5万円
合計: 77.6万円
NOI: 359.2万円
ADS: 141.9万円
BTCF: +217.3万円/年(月+18.1万円)
主要指標:
FCR: 359.2 ÷ 3,000 = 12.0%
DSCR: 359.2 ÷ 141.9 = 2.53
BER: (77.6 + 141.9) ÷ 480 = 45.7%
CCR: 217.3 ÷ 750 = 29.0%
収支は非常に良好です。では10年間の推移と税金を含めるとどうなるか。
10年間の年次推移
空室率を年0.5%ずつ悪化、賃料を年1%ずつ下落させる保守的な想定で計算します。
| 年 | 月賃料/室 | 空室率 | NOI | BTCF | 減価償却 | ATCF(概算) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 5.00万円 | 8.0% | 360万円 | +218万円 | 78万円 | +176万円 |
| 3 | 4.90万円 | 9.0% | 346万円 | +204万円 | 78万円 | +165万円 |
| 5 | 4.80万円 | 10.0% | 333万円 | +191万円 | 78万円 | +155万円 |
| 7 | 4.71万円 | 11.0% | 321万円 | +179万円 | 78万円 | +145万円 |
| 10 | 4.57万円 | 12.5% | 302万円 | +160万円 | 78万円 | +130万円 |
ℹ RC造は償却期間が長い
RC造の残存耐用年数は簡便法で27年あるため、10年間の保有中はずっと減価償却が継続します。デッドクロス(償却終了による税負担増加)は保有17年目以降です。木造の築古ではこれが数年で来るため、RC造の方がこの点で有利です。
10年後の売却シミュレーション
売却条件:
売却想定価格: 2,200万円(築35年・RC造の想定)
譲渡費用(3%): 66万円
ローン残高: 約1,470万円(10年間の返済後)
譲渡所得税率: 20.315%(保有5年超)
売却収支:
売却価格: 2,200万円
譲渡費用: -66万円
ローン残高返済: -1,470万円
売却CF(税前): +664万円
取得費: 3,000万円 − 減価償却累計778万円 = 2,222万円
譲渡所得: 2,200 − 66 − 2,222 = −88万円(譲渡損)
譲渡所得税: 0万円(損失のため非課税)
売却CF(税後): +664万円
トータルリターン
10年間の累計ATCF: 約1,526万円
売却CF(税後): +664万円
自己資金: -750万円
トータルリターン: 1,526 + 664 − 750 = +1,440万円
投資倍率: (750 + 1,440) ÷ 750 = 2.92倍
自己資金750万円に対して、10年間で約1,440万円のリターン。投資倍率は約2.9倍です。
リスクシナリオ:空室率20%・賃料15%下落
悪化ケース(10年目):
月賃料: 4.25万円/室(-15%)
空室率: 20%
GPI: 408万円
EGI: 326.4万円
OPEx: 77.6万円
NOI: 245.5万円
ADS: 141.9万円
BTCF: +103.6万円/年
DSCR: 1.73(まだ良好)
RC造でエリア需要がある程度維持される前提なら、悪化シナリオでもDSCR 1.73を維持できます。
✓ この物件が成立する理由
(1) RC造で融資期間22年が取れる (2) エリア空室率が8%と低い (3) 減価償却が22年間継続(デッドクロスが遠い) (4) 築35年でもRC造は融資が付きやすく出口が作れる。これらの条件が揃っているため、長期保有で利益が出る構造になっています。
年次推移と売却シミュレーションを自動計算する
賃料下落・空室悪化を年ごとに設定し、10年間の累計CF・減価償却・売却損益・IRRを自動計算。トータルリターンを確認してから判断できます。
無料でシミュレーションするまとめ
- 築25年RC造・8室・3,000万円の物件を10年保有するケースを検証
- 年間BTCF +217万円(初年度)、DSCR 2.53、FCR 12% と収支は良好
- RC造は簡便法で償却期間27年あり、デッドクロスが保有期間外
- 10年後の売却を含めたトータルリターン +1,440万円(投資倍率2.9倍)
- 悪化シナリオ(空室20%・賃料-15%)でもDSCR 1.73を維持
- 成立条件: RC造の融資期間・エリア需要・長い償却期間・出口の見通し
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