不動産投資分析のpropilar
ケーススタディ

地方・表面利回り30%物件を分析|高利回りの裏にあるリスクを数字で確認

表面利回り30%の地方物件を全指標でフル分析。なぜ高利回りでも安全とは限らないのか、空室率・融資条件・出口を含めた実態を数字で解説します。

「表面利回り30%」の地方物件。数字だけ見れば驚異的ですが、全指標で計算すると景色が一変します。

対象物件の基本情報

物件種別:   一棟アパート(6室・1K)
所在地:     地方郊外(最寄り駅 徒歩20分)
物件価格:   800万円
月賃料:     1室あたり月3.3万円(6室合計 月19.8万円)
年間GPI:   237.6万円
表面利回り: 29.7%(!)
築年数:     築35年(木造)
エリア空室率: 18%
融資条件:
  借入額:  640万円(LTV 80%)
  金利:    3.5%(地方銀行)
  融資期間: 10年(築古のため短い)
  ADS:    約76.3万円/年

⚠ 表面利回り29.7%でも安全とは限らない

地方・築古物件は物件価格が極端に安いため、表面利回りが高く計算されます。これはリスクの対価であり、「お得」を意味しません。

収支を計算する

ステップ1: EGI(空室率18%を反映)

GPI:          237.6万円
空室損(-18%): -42.8万円
貸倒損(-2%):  -4.8万円
EGI:          190.0万円

エリア空室率が18%と高い点が最初のリスクです。

ステップ2: NOI

OPEx(概算):
  管理費(5%):    11.9万円
  修繕費(10%):   23.8万円  ← 築古のため高めに設定
  固定資産税:       5万円(概算)
  保険:            3万円
  合計:           43.7万円

NOI = 190.0 − 43.7 = 146.3万円

ステップ3: 主要指標

FCR = 146.3 ÷ 800 = 18.3%
CF  = 146.3 − 76.3 = +70.0万円/年(月+5.8万円)
DSCR = 146.3 ÷ 76.3 = 1.92
BER = (43.7 + 76.3) ÷ 237.6 = 50.5%

数字だけ見ると優秀です。では何が問題なのか。

隠れたリスクを検証する

リスク1: 空室率がさらに悪化する可能性

エリア空室率18%は既に高い水準ですが、人口減少が進む地方ではさらに悪化する可能性があります。

空室率NOICF(年)DSCR
18%(現状)146.3万円+70.0万円1.92
25%126.1万円+49.8万円1.65
33%(6室中2室空室)105.9万円+29.6万円1.39
50%(6室中3室空室)75.4万円−0.9万円0.99

6室中3室が空室になるとCFがマイナスに転落します。

リスク2: 融資期間が短く返済が重い

築35年の木造は残存耐用年数がほぼゼロのため、融資期間が10年と短くなっています。

融資期間10年: ADS 76.3万円/年 → DSCR 1.92
仮に20年取れた場合: ADS 約44.5万円/年 → DSCR 3.29

→ 融資期間の短さがDSCRを押し下げている
→ 10年で完済するまで毎月6.4万円の返済が続く

リスク3: 修繕費の爆発

築35年の木造は、いつ大規模修繕が必要になってもおかしくありません。

想定される修繕費:
外壁塗装: 150万円
屋根防水: 80万円
給排水管: 200万円
合計: 430万円(物件価格の54%)

⚠ 修繕費が物件価格の半額を超える

物件価格800万円に対して修繕費430万円は、投資額の54%です。購入後3〜5年以内にこの費用が発生すると、累計CFが吹き飛びます。

リスク4: 出口がない

10年後の想定:
築45年の木造アパート・地方郊外
→ 建物評価ほぼゼロ
→ 融資がつかない(次の買い手は現金購入のみ)
→ 土地値でしか売れない(200〜300万円程度)
→ 購入価格800万円に対して500〜600万円の売却損

全指標まとめ

指標判定
表面利回り29.7%高いがリスクの対価
FCR18.3%高い
CF(年)+70.0万円現状では良好
DSCR1.92良好(ただし空室悪化で急落)
BER50.5%良好
空室率50%時DSCR0.99危険
修繕リスク物件価格の54%高い
出口売却損500〜600万円厳しい
表面利回りだけで判断

表面利回り: 29.7%
→ 「超高利回り!即購入!」
→ 修繕費・空室悪化・出口損を想定せず
→ 3年後に修繕430万円 + 空室増加で破綻

全リスクを織り込んで判断

FCR: 18.3%(リスク対価として高い)
修繕リスク: 430万円
出口: 売却損500万円の可能性
→ 修繕・出口を織り込むと実質リターンは大幅に低下
→ 購入するなら価格交渉(400〜500万円)が必要

高利回り物件のリスクを数字で確認する

空室率・修繕費を織り込んだFCR・DSCR・CF・IRRを自動計算。感度分析で最悪シナリオも確認できます。

無料で物件を分析する

まとめ

  • 地方高利回り物件は「安いからリスクが高い」のであって「お得」ではない
  • 表面利回り29.7%でも空室50%でCFがマイナスに転落する
  • 築古の修繕費リスクは物件価格の50%超になることもある
  • 出口(売却)は土地値のみで大幅な売却損の可能性
  • 購入するなら修繕費・出口損を織り込んだ上で価格交渉が必須

関連記事:都心vs地方の収益構造 / 表面利回り8%物件をフル分析 / 利回り6%でも買うべき物件の条件

この分析、手計算でやりますか?

Propilarなら表面利回り・実質利回り・キャッシュフロー・DSCRを数秒でシミュレーションできます。

この条件でキャッシュフローを計算する

関連記事