「空室が増えたらどこまで耐えられるか」——不動産投資の初心者がつまずきやすい問いに対して、直接答えを出せる指標が BER(Break-Even Ratio:損益分岐入居率) です。
BERとは何か
BERは「収支がプラスマイナスゼロになる最低入居率」です。言い換えると、入居率がBERを下回るとキャッシュフローがマイナスになるということです。
BER(%) = (運営費用 + 年間元利返済額) ÷ 年間満室賃料(GPI) × 100
BERが低いほど、空室が増えても耐えられる物件です。分母の「年間満室賃料」はGPI(全室満室・滞納ゼロの年間賃料)と同じ概念です。
具体的な計算例
物件価格2,000万円・月額賃料13万円・フルローン(2.5%・30年)の場合:
各数値の確認:
年間満室賃料: 156万円(13万円 × 12ヶ月)
運営費用(20%): 31.2万円
年間返済額(ADS): 94.8万円
BERの計算:
BER = (31.2万円 + 94.8万円) ÷ 156万円 × 100
= 126万円 ÷ 156万円 × 100
≈ 80.8%
この物件は入居率が80.8%を下回るとキャッシュフローがマイナスになります。逆に言えば、入居率が80.8%以上であれば黒字を維持できます。
ℹ 入居率80.8%の実態
入居率80.8%は、5戸なら満室、10戸なら9戸以上の入居が必要になる水準です。単身向け区分マンションでは達成できるケースもありますが、地方・築古・競合が多い物件では割り込むリスクがあります。
BERの安全ライン
| BER | 評価 |
|---|---|
| 70%未満 | 空室耐性が高い(安全圏) |
| 70〜80% | 標準的な水準 |
| 80〜85% | 要注意。空室が増えるとすぐマイナスに |
| 85%超 | 危険圏。常に満室に近い状態を維持しないと赤字 |
※目安は物件種別・エリア・融資条件によって変わります。
⚠ BER 85%超は経営リスクが高い
BERが85%を超える物件は、退去が1件出るだけでキャッシュフローがマイナスに転じることがあります。空室期間・入居募集費用・原状回復費まで考えると、実質的な耐性はさらに低くなります。
BERが高くなる主な原因
① ローン返済額(ADS)が大きい
フルローン・高金利・短期返済はADSを押し上げ、BERを悪化させます。頭金を増やすか、返済期間を延ばすことで改善できます。
② 賃料が低い
分母の「年間満室賃料」が小さいほど、BERは高くなります。賃料設定と市場相場のバランスを確認しましょう。
③ 運営費用が高い
管理費・修繕費・固定資産税が高い物件は、分子が大きくなりBERが上昇します。築古・木造はこのリスクが高いです。
BERとDSCRの違いと使い分け
どちらも「物件の安全性」を測る指標ですが、見方が違います。
| 指標 | 問いかけ | 見るもの |
|---|---|---|
| DSCR | 今の入居率でローンを返せるか | 現状の返済安全性 |
| BER | 入居率がどこまで落ちると赤字になるか | 空室への耐性 |
DSCR: 1.25(安全圏)
→ 「今は大丈夫」
→ 空室リスクが見えていない
DSCR: 1.25(安全圏)
BER: 83%(要注意)
→ 空室1件で赤字転落リスクあり
DSCRが安全圏でもBERが高ければ、少しの空室でCFがマイナスになります。DSCR と BER を両方確認することで、現状と空室リスクの両面を把握できます。
✓ 2つの指標が揃って初めて安心
DSCR 1.2以上 かつ BER 80%以下であれば、現状の返済安全性と空室耐性の両方を確保できています。どちらかだけでは片方の視点が欠けます。
エリアの平均入居率と比較する
BERを正しく評価するには、物件所在地の平均入居率を知る必要があります。
- 都市部(東京23区・大阪市など):平均入居率の目安は 95%前後
- 地方都市:平均入居率の目安は 85〜90%
- 地方郊外:平均入居率の目安は 75〜85%
BERが地域の平均入居率を上回っている場合は、常に高入居率の維持が前提となる収支計画であり、空室リスクへの余裕がほぼない状態です。なお、上記の入居率はあくまで参考値で、物件タイプ・築年・駅距離・募集賃料によって大きく変わるため、最終判断では最新の賃貸実績データを確認してください。
BERを改善する方法
- 頭金を増やしてADSを下げる — BERの分子(ADS)を減らす直接的な対策
- 賃料を引き上げる — BERの分母を大きくする(ただし競合との比較が必要)
- 運営費用を最適化する — 管理会社の見直しや修繕コストの抑制
- BERが低い物件を選ぶ — 購入前に計算して判断基準に組み込む
まとめ
- BER = (運営費用 + ADS) ÷ 年間満室賃料 × 100
- BERを下回る入居率になるとCFがマイナスになる
- 70%未満が安全圏。85%超は常に高入居率を維持しなければならず危険
- DSCRは「今の安全性」、BERは「空室への耐性」を測る — 両方確認することが重要
- エリアの平均入居率とBERを比較して、現実的な収支を見極める
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