不動産投資で「利回り」という言葉が使われるとき、何を指しているかを確認することが重要です。「表面利回り8%」と「実質利回り5.5%」では意味が全く異なります。この記事では、3つの主要な利回り指標の定義・計算方法・使い分けを整理します。
3つの指標の一覧比較
| 指標 | 何を測るか | 計算式 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 表面利回り | 物件価格に対する賃料収入の比率(費用除く) | GPI ÷ 物件価格 | 物件の第一印象・比較用 |
| 実質利回り(FCR) | 物件価格に対する実際の純収益の比率 | NOI ÷ 物件価格 | 収益性の本質的な評価 |
| CCR | 自己資金に対するCFの比率 | 年間CF ÷ 自己資金 | 自己資金の効率性の評価 |
表面利回り(グロス利回り)
定義と計算式
表面利回り(%)= GPI(年間満室想定収入) ÷ 物件購入価格 × 100
例: 物件価格2,000万円、月賃料10万円(年間120万円)の場合
表面利回り = 120万円 ÷ 2,000万円 × 100 = 6%
特徴と限界
- 計算が簡単で物件比較に便利
- 運営費(管理費・修繕費・固定資産税など)を含まない
- 空室の想定もない(満室前提)
- 現行賃料が相場より高い場合でも、そのまま計算される
⚠ 表面利回りだけで投資判断してはいけない
表面利回りは費用と空室を無視した「最も楽観的な数字」です。物件を見つけた段階でのスクリーニングには使えますが、購入判断には必ず実質利回り(FCR)で確認する必要があります。
実質利回り(FCR:Free & Clear Return)
定義と計算式
FCR(%)= NOI(純営業収益) ÷ 物件購入価格 × 100
NOI = GPI × (1 − 空室率) − OPEx(運営費)
OPEx の目安:GPI の 20〜30%(管理費・修繕費・固定資産税など)
例: 同じ物件をFCRで計算する場合
GPI: 120万円
空室損失(-5%): -6万円
OPEx(-20%): -24万円
NOI: 90万円
FCR = 90万円 ÷ 2,000万円 × 100 = 4.5%
表面利回り6%がFCR4.5%になります。
特徴と使い方
- 費用と空室を含んだ「実態に近い収益率」
- ローン金利との比較(イールドギャップ)に使う
- FCR > ローン金利 + 1〜2%が収益性の基本ライン
表面利回り: 8%
「高利回り!すぐ購入」
→ OPEx・空室を計算していない
→ 実際のFCRは5%以下
→ ローン金利と逆転の可能性
表面利回り: 8%
OPEx・空室を引いてFCR計算
FCR: 5.2%
ローン金利: 2.5%
イールドギャップ: +2.7%(良好)
CCR(キャッシュ・オン・キャッシュ・リターン)
定義と計算式
CCR(%)= 年間CF(税引前) ÷ 自己資金(頭金+諸費用) × 100
例: 物件2,000万円、頭金400万円、諸費用80万円、年間CF40万円の場合
自己資金 = 400万円 + 80万円 = 480万円
CCR = 40万円 ÷ 480万円 × 100 = 約8.3%
特徴と使い方
- 「自分が出した現金に対するリターン」を測る指標
- 融資(レバレッジ)の効果を反映する
- FCRより高くなる場合(レバレッジが効いている)と低くなる場合がある
- フルローンの場合は分母がゼロに近づきCCRが極めて高くなる(ただし分子のCFが小さければ意味が薄い)
3つの指標の使い分け
【物件のスクリーニング段階】
表面利回り
→ 多数の物件を素早く比較する。「表面利回り5%未満は対象外」など
【収益性の本質評価】
FCR(実質利回り)
→ ローン金利との比較。イールドギャップで収益の質を判断
【自己資金効率の評価】
CCR
→ 複数の物件候補で「どれが自己資金を最も効率的に使えるか」を比較
✓ 3指標は組み合わせて使う
FCRが高くてもCCRが低い場合、自己資金を多く拘束している可能性があります。逆にCCRが高くてもFCRが低い場合、レバレッジで見た目を良くしているだけかもしれません。3つを組み合わせて全体像を把握します。
比較表
| 比較項目 | 表面利回り | FCR | CCR |
|---|---|---|---|
| 費用を含む | ✕ | ◎ | △(CF経由) |
| 空室を考慮 | ✕ | ◎ | △(CF経由) |
| 融資の影響を反映 | ✕ | ✕ | ◎ |
| 自己資金効率 | ✕ | ✕ | ◎ |
| 計算の簡単さ | ◎ | ○ | ○ |
| 使う場面 | スクリーニング | 収益性評価 | 資金効率比較 |
まとめ
- 表面利回り:スクリーニング用。費用・空室を含まない楽観値
- FCR(実質利回り):収益性の本質評価。ローン金利との比較に使う
- CCR:自己資金効率の評価。レバレッジ効果を反映
- 表面利回りだけで投資判断してはいけない
- 3指標を組み合わせて使うのが正しい評価
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