不動産物件を「良い・悪い」と判断するとき、何を根拠にしていますか?表面利回りだけで判断している場合、本当に重要な情報の大半を見落としている可能性があります。この記事では、初心者が使うべき6つの評価指標と、それを使う順序を解説します。
なぜ表面利回りだけでは不十分か
不動産広告に掲載される「利回り○%」は、ほぼすべて表面利回りです。
表面利回り = 年間満室賃料 ÷ 物件価格 × 100
この計算には空室・運営費用・ローン返済が一切含まれていません。表面利回り8%の物件が実際にはCFマイナスになるケースは珍しくありません。詳しくは表面利回り8%でも赤字になる理由を参照してください。
⚠ 表面利回りは「最大値」の広告数字
表面利回りは空室ゼロ・費用ゼロという非現実的な前提での数字です。物件比較の第一スクリーニングには使えますが、購入判断の根拠にはなりません。
評価に使う6つの指標
| 指標 | 何を測るか | 安全ラインの目安 |
|---|---|---|
| FCR(実質利回り) | NOIベースの実態利回り | ローン金利+1%以上 |
| DSCR(返済余裕率) | 現状の返済安全性 | 1.2以上 |
| CF(キャッシュフロー) | 毎月の手残り | 月次でプラス |
| BER(損益分岐入居率) | 空室への耐性 | 80%以下 |
| LTV(ローン残高対資産価値) | 財務的な安全性 | 80%以下 |
| CCR(自己資金配当率) | 自己資金の効率 | 8%以上(目安) |
この6指標を順番に確認することで、物件の実態を多角的に把握できます。
ステップ1:FCRでローン金利と比較する
まず最初に確認するのはFCR(実質利回り)です。
FCR = NOI ÷ 物件価格 × 100
NOI = EGI − OPEx = (GPI − 空室損失) − 運営費用
判断基準:FCR > ローン金利
FCRがローン金利を下回る場合、レバレッジが逆効果になります(イールドギャップがマイナス)。ローンを使えば使うほど収益率が下がるため、原則として避けることが推奨されます。
ℹ FCRの目安は物件種別・エリアで変わる
区分マンション・一棟アパート・商業物件では適切なFCRの水準が異なります。また金利環境によっても基準が変化します。「FCR > ローン金利+1%以上」を初心者の目安として使いましょう。
ステップ2:DSCRで返済安全性を確認する
FCRが基準を満たしたら、次はDSCRを計算します。
DSCR = NOI ÷ ADS(年間元利返済額)
判断基準:DSCR ≥ 1.2
DSCRが1.0を下回ると、賃料収入だけではローン返済ができません。1.2以上あれば、10〜15%程度の収入減少(空室増・賃料下落)が起きても返済を継続できます。
ステップ3:CFで毎月の手残りを確認する
DSCRが安全圏でも、実際の手残り(キャッシュフロー)を確認します。
CF = NOI − ADS
投資物件はCFがプラスであることが基本です。CFがマイナスの場合、毎月手出しが必要な「持ち出し物件」になります。特に初期段階ではCFのプラスを維持することが重要です。
NOI: 120万円/年
ADS: 132万円/年
CF: −12万円/年(月−1万円)
→ 毎月持ち出しが発生
→ 空室が増えると即座に悪化
NOI: 120万円/年
ADS: 96万円/年
CF: +24万円/年(月+2万円)
→ 手残りがある状態で保有
→ 空室・修繕への備えができる
ステップ4:BERで空室耐性を確認する
現状のCFがプラスでも、空室が増えたときの耐性を確認します。
BER = (OPEx + ADS) ÷ GPI × 100
判断基準:BER ≤ 80%
BERが高い物件は、少し空室が増えただけでCFがマイナスに転落します。エリアの平均入居率とBERを比較して、現実的な空室シナリオで耐えられるかを確認しましょう。
ステップ5:LTVで財務的な安全性を確認する
LTVは「今売れるか」「追加融資を受けられるか」に直結します。
LTV = ローン残高 ÷ 物件価値 × 100
判断基準:LTV ≤ 80%
購入時のLTVが高い(フルローンに近い)場合、物件価格が少し下落しただけでオーバーローン状態になるリスクがあります。特に地方・築古物件では価格下落リスクを考慮して、頭金を厚めに入れることを検討しましょう。
ステップ6:CCRで自己資金の効率を測る
最後にCCR(自己資金配当率)で投下した自己資金に対する利回りを確認します。
CCR = 税引前CF ÷ 自己資金(頭金 + 諸費用) × 100
CCRが高いほど自己資金の使い方が効率的ですが、レバレッジを効かせすぎると LTV・DSCR が悪化するトレードオフがあります。CCRは「複数の物件候補を比較する」用途で使うと効果的です。
6指標を使った総合判断フロー
① FCR > ローン金利(+1%以上) → NG なら見送り
② DSCR ≥ 1.2 → NG なら条件変更か見送り
③ CF がプラス → NG なら持ち出し覚悟か見送り
④ BER ≤ 80% → NG なら空室リスクを再評価
⑤ LTV ≤ 80% → NG なら頭金増額を検討
⑥ CCR で複数物件を比較 → より効率的な候補を選ぶ
全ての指標を「完璧」にクリアする物件は多くありません。重要なのはどの指標がどの程度外れているかを把握し、リスクを認識したうえで判断することです。
✓ 数字が揃えば感情で動かなくなる
「なんとなく良さそう」「担当者に強く勧められた」といった感情的な判断は、このチェックリストを通すことで排除できます。数字が基準を満たしていれば自信を持って買える、満たしていなければ理由を持って断れます。
手計算では全指標を揃えるのに時間がかかる
6指標を正確に計算するには、GPI・EGI・NOI・ADS・OPEx・自己資金額などの数値を組み合わせた複数の計算が必要です。手計算では1物件あたり30〜60分かかることもあります。
6指標を一括計算して物件を評価する
物件価格・賃料・融資条件・諸費用を入力するだけで、FCR・DSCR・CF・BER・LTV・CCRを自動計算。数字の根拠を持って物件を評価できます。
無料で物件を評価してみるまとめ
- 表面利回りは広告数字。FCR・DSCR・CF・BER・LTV・CCRの6指標で多角的に評価する
- 判断順序:①FCR → ②DSCR → ③CF → ④BER → ⑤LTV → ⑥CCR
- FCRはローン金利+1%以上、DSCRは1.2以上、CFはプラス、BERは80%以下が初心者の目安
- 全指標が完璧な物件はまれ。どの指標がどの程度外れているかを把握したうえで判断する
- 数字に基づいた判断は「買う理由」も「断る理由」も明確にする
関連記事:実質利回り(FCR)とNOIとは? / DSCRとは? / 感度分析とは? / 良い物件でも見送るべきケース / 融資条件で収益はどう変わる?