同じ物件でも融資条件が変わると、月々の収支は大きく変わります。金利0.5%の差・融資期間5年の差・頭金10%の差が、DSCR・CF・長期リターンにどう影響するかを数字で確認します。
前提:シミュレーション用の物件条件
物件価格: 2,000万円
NOI(年間): 120万円(FCR 6%)
融資対象: 物件価格の全額または一部
影響1:金利の違い
金利は毎月の返済額に直接影響し、DSCRとCFを変化させます。
金利別の収支比較(借入2,000万円・30年)
| 金利 | 月返済額(目安) | ADS(年間) | DSCR | 年間CF |
|---|---|---|---|---|
| 1.5% | 約6.9万円 | 約82.8万円 | 1.45 | +37.2万円 |
| 2.0% | 約7.4万円 | 約88.8万円 | 1.35 | +31.2万円 |
| 2.5% | 約7.9万円 | 約94.8万円 | 1.27 | +25.2万円 |
| 3.0% | 約8.4万円 | 約100.8万円 | 1.19 | +19.2万円 |
| 3.5% | 約8.98万円 | 約107.8万円 | 1.11 | +12.2万円 |
※上記は元利均等返済の概算値です。
金利が1.5%から3.5%に上がると、年間CFは+37.2万円から+12.2万円に減少します。DSCR安全ラインの1.2を下回るリスクも出てきます。
⚠ 変動金利は将来の金利上昇リスクを含む
変動金利は現在低金利でも、将来的に上昇するリスクがあります。現在の金利で収支がギリギリの場合、金利が1〜2%上昇すると赤字転落します。感度分析(金利上昇シナリオ)で耐性を確認することを推奨します。
影響2:融資期間の違い
融資期間が長いほど月々の返済額は下がり、毎月のCFは改善します。ただし総返済額(利息の合計)は増加します。
融資期間別の収支比較(借入2,000万円・金利2.5%)
| 融資期間 | 月返済額(目安) | ADS(年間) | DSCR | 年間CF | 総返済額(目安) |
|---|---|---|---|---|---|
| 20年 | 約10.6万円 | 約127.2万円 | 0.94 | −7.2万円 | 約2,549万円 |
| 25年 | 約9.0万円 | 約108万円 | 1.11 | +12万円 | 約2,700万円 |
| 30年 | 約7.9万円 | 約94.8万円 | 1.27 | +25.2万円 | 約2,844万円 |
| 35年 | 約7.1万円 | 約85.2万円 | 1.41 | +34.8万円 | 約2,983万円 |
※上記は概算値です。
融資期間を20年から35年にするとDSCRは0.94から1.41に改善しますが、総返済額が430万円以上増えます。
月返済: 10.6万円
DSCR: 0.94(危険)
年間CF: −7.2万円(赤字)
総返済額(目安): 2,549万円
→ CFが回らず手元資金が減る
月返済: 7.1万円
DSCR: 1.41(良好)
年間CF: +34.8万円
総返済額(目安): 2,983万円
→ CFは改善するが総利息は増える
ℹ 融資期間の最適解は目的によって異なる
CF重視なら長期融資、総返済額削減なら短期融資が有利です。ただし短期融資でDSCRが1.0を切る場合は、CFが赤字になり手元資金が減り続けます。DSCRが最低1.2以上になる融資期間を選ぶことが基本です。
影響3:頭金(LTV)の違い
頭金を増やすと借入額が減り、毎月のCFは改善します。ただし自己資金の拘束が増えるため、CCR(自己資金回収率)が変わります。
頭金別の収支比較(物件2,000万円・金利2.5%・30年)
| 頭金 | LTV | 借入額 | 月返済(目安) | DSCR | 年間CF | CCR(目安) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 0円(フルローン) | 100% | 2,000万円 | 7.9万円 | 1.27 | +25.2万円 | 算出不能(自己資金0) |
| 200万円 | 90% | 1,800万円 | 7.1万円 | 1.41 | +34.8万円 | 17.4% |
| 400万円 | 80% | 1,600万円 | 6.3万円 | 1.54 | +43.8万円 | 11% |
| 600万円 | 70% | 1,400万円 | 5.5万円 | 1.64 | +53.2万円 | 8.9% |
※概算値です。
フルローンは自己資金が0のためCCRは定義上不安定(算出不能)ですが、自己資金を拘束しない一方で借入リスクは高くなります。頭金を増やすとCFとDSCRは改善しますが、CCRは低下します。
✓ フルローンは「リスクとリターンのトレードオフ」
フルローンは自己資金を温存できる代わりに、空室・修繕・金利上昇などのショックに対する耐性が低下します。自己資金の余裕・ポートフォリオ全体のリスク・融資条件を総合して判断することが重要です。
融資条件の感度分析
同じ物件でも、融資条件の組み合わせで収支は大きく変わります。
最良条件:金利1.5%・35年・LTV 80%
→ DSCR 2.0超・CF大幅プラス
最悪条件:金利3.5%・20年・LTV 100%
→ DSCR 0.8未満・CF赤字
→ 同じ物件なのに収支が真逆になる
このように融資条件の違いは収益性を根本から変えます。物件の価格交渉と同時に、融資条件の交渉・比較も収益改善の重要な手段です。
融資条件を決める際のチェック
□ 複数の金融機関で金利を比較した
□ 返済期間は DSCR ≥ 1.2 を満たす期間を選んだ
□ 頭金とCF・CCRのバランスを確認した
□ 変動金利の場合、金利+1〜2%上昇シナリオでも DSCR ≥ 1.0 になるか確認した
□ フルローンの場合、手元に緊急予備資金が十分あるか確認した
金利・期間・頭金を変えながら収支をシミュレーションする
融資条件を変えるだけで DSCR・CF・CCR が自動再計算されます。最適な融資条件を数字で比較してから判断できます。
無料で融資条件シミュレーションをするまとめ
- 同じ物件でも融資条件によって収益性は大きく変わる
- 金利:1〜2%の差で年間CFが数十万円変化・DSCRが危険ラインを超えることもある
- 融資期間:長くするほどCFは改善するが総返済額は増加
- 頭金(LTV):頭金を増やすとCF・DSCRは改善するがCCRは低下
- 融資期間はDSCRが1.2以上になる期間を選ぶのが基本
- 変動金利は金利上昇シナリオでの耐性を必ず確認する