不動産投資のシミュレーションで「家賃は現在の水準で30年間維持される」と仮定している人がいます。しかし現実には家賃は時間の経過とともに下落するのが通常です。長期保有を前提とするなら、家賃下落を織り込んだシミュレーションが不可欠です。
家賃が下落する主な要因
1. 建物の老朽化
新築・築浅の物件と比較して、築年数が経つにつれて賃料競争力が落ちます。設備が古くなり、周辺の新築物件に対して見劣りするためです。
築年数と家賃の関係(目安):
| 築年数 | 家賃水準(新築比) |
|---|---|
| 新築〜5年 | 100% |
| 6〜10年 | 93〜97% |
| 11〜20年 | 85〜92% |
| 21〜30年 | 75〜85% |
| 31年以上 | 65〜80% |
※エリア・物件タイプ・リノベーション有無により大きく異なります。
2. 人口減少・需要低下
特に地方都市では人口減少が続いており、需要の低下が家賃下落を引き起こします。都市部でも特定エリアでは人口流出が起きることがあります。
3. 周辺の供給増加
近隣に新築マンションや大型アパートが建設されると、競合が増えて家賃相場が下がる場合があります。
4. 市場全体の賃料水準の変化
景気後退・物価変動・政策変化など、マクロ要因で家賃相場全体が変動することがあります。
家賃下落を無視するとどうなるか
現在家賃8万円・30年シミュレーション:
家賃一定の場合と年間0.5%下落の場合の比較:
【家賃一定仮定】
年間収入:96万円 × 30年 = 2,880万円
【年間0.5%下落の場合】
10年後:8万円 × 0.995^10 = 約7.6万円
20年後:約7.2万円
30年後:約6.9万円
30年間の累計収入:約2,670万円
差額:約210万円(約7%の収入差)
下落率が年1%になると累計収入は約2,470万円まで下がり、差は約410万円(14%)に拡大します。さらに空室・修繕費増加が重なると差はいっそう広がります。
⚠ 楽観的シミュレーションの危険性
「家賃一定・空室なし・修繕費ゼロ」で計算した利回りは現実と大きくかけ離れます。特に30年・35年ローンを組む場合は、保守的な前提でシミュレーションすることが必須です。
家賃下落リスクへの対策
1. リノベーション・設備更新
古くなった設備(キッチン・浴室・クロス・フローリング)をリノベーションすることで、家賃を維持または引き上げることができます。
- 内装リノベーション:50〜150万円で家賃を数千円〜1万円引き上げられることも
- 設備グレードアップ(エアコン・追い焚き機能・モニター付きインターホン等)
投資回収期間を計算した上でリノベーションを判断します。
2. 差別化要素の追加
周辺物件との差別化で競争力を維持します。
- 宅配ボックスの設置
- インターネット無料化
- ペット可・楽器可への転換
- バイク置き場の整備
3. 価格設定の見直し
家賃が相場より高すぎると長期空室になります。定期的に市場賃料との乖離を確認し、適切なタイミングで家賃を調整します。「少し下げてでも空室をなくす」方が収益は高いケースが多いです。
ℹ 家賃下げてもCFは改善することがある
家賃8万円で2ヶ月空室より、家賃7.5万円で常に満室の方が年間収益は高くなります。 8万円 × 10ヶ月 = 80万円 vs 7.5万円 × 12ヶ月 = 90万円
4. エリア選定の重要性
家賃が下落しにくいエリアを最初から選ぶことが最善の対策です。
家賃が下落しにくいエリアの特徴:
- 人口が増加・維持されている
- 雇用が安定している(大企業・官公庁・大学)
- 交通アクセスが良い(主要駅から徒歩10分以内)
- 新築供給が限られている(土地が少ない)
5. 保守的なシミュレーションで投資判断する
最初から家賃下落を織り込んでシミュレーションし、それでも成立する物件のみを購入します。
推奨する前提条件:
| 項目 | 楽観 | 推奨(保守的) |
|---|---|---|
| 年間家賃下落率 | 0% | 0.5〜1% |
| 空室率 | 0% | 10〜15% |
| 修繕費(年間) | 0円 | 家賃収入の5〜10% |
長期収益の全体像
30年間の投資収益を正確に評価するには以下を含める必要があります。
トータル収益 =
年間CF × 保有年数(家賃下落・空室率込み)
− 大規模修繕費(10年・20年・30年ごと)
+ 売却価格(市場価値)
− ローン残高
− 売却費用・譲渡税
家賃下落・空室を織り込んだシミュレーション
Propilarでは家賃下落率・空室率・修繕費を詳細に設定して長期シミュレーションが可能です。楽観的な数字でなく、現実的な収益予測を確認してください。
無料でシミュレーションするまとめ
- 家賃は築年数経過・人口減少・競合増加によって下落するのが通常
- 30年後の家賃は現在の65〜85%程度になることを想定する
- 対策はリノベーション・差別化・適切な家賃設定・エリア選定
- 「家賃一定・空室ゼロ」の楽観的シミュレーションで投資判断するのは危険
- 長期収益の評価には家賃下落・修繕費・売却価格をすべて含める
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