「駅徒歩4分で利回り8.89%、しかも満室稼働中」——不動産投資の物件探しで、こんな条件を見つけたら飛びつきたくなります。
シリーズ「この物件、買っていい?」では、実際に売りに出ている物件の数字を借りて、Propilarで判定します。第3回は、埼玉県飯能市・西武池袋線「飯能」駅から徒歩4分の1棟マンションです。
ℹ この記事の前提
物件の数字は、2026年10月に不動産ポータルサイトへ掲載されていた実在物件のものです。最寄り駅と徒歩分数のみ掲載し、番地・物件名・販売会社は伏せています。融資条件(金利・借入割合・期間)と空室率は、判定のために置いた仮定です。判定結果は入力条件と評価基準によって変わります。投資判断はご自身の責任で行ってください。
対象物件
物件種別: 1棟マンション(鉄骨造4階建て・2DK×6戸)
最寄り駅: 西武池袋線「飯能」駅 徒歩4分
築年: 1991年築
物件価格: 5,300万円
表面利回り: 8.89%(現況満室の年間賃料 471.6万円 / 月39.3万円)
1戸あたりの家賃は平均で約6.6万円。ファミリーや二人暮らし向けの2DKが6戸の、小ぶりな1棟マンションです。
判定に使った仮定は次のとおりです。
借入額: 4,770万円(物件価格の9割)
金利: 2.5%
返済期間: 20年
空室率: 10%
判定:要確認項目あり
Propilarの判定は 「要確認項目あり」 でした。
| 指標 | 結果 | Propilarの目安 |
|---|---|---|
| 実質利回り(FCR) | 6.43% | 5%以上で良好、3%未満で要注意 |
| 月次キャッシュフロー | +53,779円 | プラスであること |
| DSCR | 1.21 | 1.3以上で良好、1.0未満はリスク |
| BER(損益分岐入居率) | 75.3% | 70%以下で良好、85%超はリスク |
| CCR(自己資金配当率) | 6.78% | 5%以上で良好、0%未満はリスク |
実質利回り・CCR・月次CF・NPV・IRR・感度分析は「良好」。それでも判定が「収支良好」にならないのは、DSCRとBERが目安に届いていないからです。
黒字なのに「要確認」になる理由
1. お金の流れ
1年分のお金の流れは次のとおりです(運営費・NOI・年間返済額は、Propilarの結果から逆算した概算です)。
満室の年間賃料(GPI): 471.6万円
空室損(10%): −47.2万円
空室を引いた収入(EGI): 424.4万円
運営費: 約−57万円
運営費を引いた純収益(NOI): 約368万円
年間のローン返済額: 約−303万円
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手残り(税引前CF): 約+65万円(月 約+5.4万円)
黒字ですが、DSCRは 1.21。純収益が返済の1.2倍しかなく、Propilarの目安(1.3以上)に届きません。
2. 6戸のうち2戸空けば赤字(BER 75.3%)
BER(損益分岐入居率)は 75.3%。入居率がこれを下回ると赤字です。
戸数が少ない物件では、この数字を「何戸空いたら赤字か」に置き換えると実感がわきます。
6戸満室: 入居率 100% → 黒字
1戸空室: 入居率 83.3% → 黒字(BER 75.3%を上回る)
2戸空室: 入居率 66.7% → 赤字(BER 75.3%を下回る)
戸数が少ないほど、1戸の空室が入居率を大きく動かします。2戸の退去が重なるだけで赤字というのが、この物件の弱点です。
→ BERの詳しい意味は「BERとは?」で解説しています。
3. レバレッジはぎりぎりプラス(FCR 6.43% > K% 6.36%)
借入で収益を増やせるかは、2つの方法で判定できます。
- 金利で比べる(簡易判定): FCR 6.43% − 金利 2.5% = +3.93%。余裕があるように見えます
- K%(ローン定数)で比べる(Propilarの判定): 20年返済のK%は 6.36%。FCR 6.43%との差はわずか 0.07ポイント
Propilarの判定ではレバレッジは「有効」ですが、ほぼ境界線上です。金利が少し上がるか、返済期間が短くなれば、すぐに逆転します。
落とし穴:融資期間が10年なら赤字に転落
この物件は築35年の鉄骨造です。鉄骨造の法定耐用年数は34年なので、すでに耐用年数を超えています。耐用年数を超えた物件は、融資期間を短くされることが少なくありません。
そこで、返済期間だけを20年から10年に変えて判定し直しました。
| 返済期間 | 判定 | 月次CF | DSCR |
|---|---|---|---|
| 20年 | 要確認項目あり | +53,779円 | 1.21 |
| 10年 | リスク要因多い | −143,124円 | 0.68 |
物件も家賃も同じなのに、融資期間が10年になるだけで、毎月14万円の持ち出しに変わります。元本を10年で返すため、年間返済額が大きく増えるからです。
⚠ 高利回りの築古物件は「何年で借りられるか」が先
利回りが高く見える築古物件ほど、融資期間が短くなりやすく、キャッシュフローが返済に吸い込まれます。物件を検討するときは、利回りを見る前に、金融機関で何年の融資が付くかを確認しましょう。
判断のポイント
この物件を前向きに検討するなら、次の3点を確認したいところです。
- 融資期間: 20年近い期間が付くか。10年前後なら、自己資金を大きく入れないと赤字です
- 空室の埋まりやすさ: 2DKの需要と、退去後の募集期間。2戸同時に空くと赤字になります
- 修繕の予定: 築35年の鉄骨造は、外壁・屋上防水・給排水管の更新時期です。運営費の自動見積もりには大規模修繕が十分に入っていません
この物件の条件で、自分でも判定してみる
上の物件価格・賃料・融資条件を入力した状態でPropilarが開きます(登録不要)。返済期間を10年・15年と変えて、どこで判定が変わるか試してみてください。所在地を入れると地域需要も含めて判定できます。
この条件でPropilarを開くまとめ
- 飯能駅 徒歩4分・5,300万円の1棟マンション(2DK×6戸・表面利回り8.89%)を、融資9割・金利2.5%・20年で判定すると 「要確認項目あり」
- 月5.4万円の黒字でも、DSCR 1.21・BER 75.3%で余裕が小さい。6戸のうち2戸空けば赤字
- K%基準のレバレッジは、0.07ポイント差でかろうじてプラス
- 融資期間が10年になると、月14.3万円の持ち出しで「リスク要因多い」に転落する
次回は、埼玉県所沢市・東所沢駅徒歩18分、表面利回り9.84%のRC造1棟マンションを判定します。