シリーズ「この物件、買っていい?」では、実際に売りに出ている物件の数字を借りて、Propilarで判定します。これまでの3回は「リスク要因多い」「要確認項目あり」が続きました。
第4回は、埼玉県所沢市・JR武蔵野線「東所沢」駅から徒歩18分のRC造1棟マンション。今回はじめて 「収支良好」 の判定が出ました。ただし、この判定には大きな前提があります。
ℹ この記事の前提
物件の数字は、2026年10月に不動産ポータルサイトへ掲載されていた実在物件のものです。最寄り駅と徒歩分数のみ掲載し、番地・物件名・販売会社は伏せています。融資条件(金利・借入割合・期間)と空室率は、判定のために置いた仮定です。判定結果は入力条件と評価基準によって変わります。投資判断はご自身の責任で行ってください。
対象物件
物件種別: 1棟マンション(RC造5階建て・2LDK×18戸)
最寄り駅: JR武蔵野線「東所沢」駅 徒歩18分
築年: 1990年築
物件価格: 1億4,500万円
表面利回り: 9.84%(想定年間賃料 1,426.2万円 / 月118.9万円)
1戸あたりの家賃は平均で約6.6万円。駅からは遠めですが、ファミリー向けの2LDKが18戸あります。
判定に使った仮定は次のとおりです。
借入額: 1億3,050万円(物件価格の9割)
金利: 2.5%
返済期間: 25年
空室率: 10%
判定:収支良好
Propilarの判定は 「収支良好」 でした。
| 指標 | 結果 | Propilarの目安 |
|---|---|---|
| 実質利回り(FCR) | 7.16% | 5%以上で良好、3%未満で要注意 |
| 月次キャッシュフロー | +347,674円 | プラスであること |
| DSCR | 1.59 | 1.3以上で良好、1.0未満はリスク |
| BER(損益分岐入居率) | 59.8% | 70%以下で良好、85%超はリスク |
| CCR(自己資金配当率) | 16.09% | 5%以上で良好、0%未満はリスク |
「確認が必要な指標」はLTV(借入比率90%)だけ。金利上昇・空室増加・賃料下落の3つのストレスシナリオでも、税引前キャッシュフローは黒字を保ちます。
数字が良い理由
1年分のお金の流れは次のとおりです(運営費・NOI・年間返済額は、Propilarの結果から逆算した概算です)。
満室想定の年間賃料(GPI): 1,426.8万円
空室損(10%): −142.7万円
空室を引いた収入(EGI): 1,284.1万円
運営費: 約−164万円
運営費を引いた純収益(NOI): 約1,120万円
年間のローン返済額: 約−702万円
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手残り(税引前CF): 約+418万円(月 約+34.8万円)
- DSCR 1.59: 純収益が返済の1.6倍あり、返済に余裕があります
- BER 59.8%: 18戸のうち7戸が空いても、収支はまだ黒字です
- レバレッジ有効: FCR 7.16% が K%(年間元利返済額 ÷ 借入額)5.38% を上回ります。金利(2.5%)基準でも、より厳しいK%基準でもプラスです
駅から遠い分、価格に対する家賃が高く(利回りが高く)、それが数字の良さにつながっています。
落とし穴:残存耐用年数の11年で借りると赤字
この判定は「25年で借りられる」ことが前提です。
RC造の法定耐用年数は47年。築36年のこの物件は、残りが11年しかありません。金融機関によっては、融資期間を残存耐用年数までに制限します。
そこで、返済期間だけを25年から11年に変えて判定し直しました。
| 返済期間 | 判定 | 月次CF | DSCR |
|---|---|---|---|
| 25年 | 収支良好 | +347,674円 | 1.59 |
| 11年 | リスク要因多い | −198,701円 | 0.82 |
物件も家賃も同じなのに、融資期間が11年になるだけで、毎月約35万円の黒字が約20万円の赤字に変わります。判定は「収支良好」から「リスク要因多い」へ、最も良い判定から最も悪い判定まで動きました。
⚠ 判定は「物件」ではなく「物件×融資条件」に出る
同じ物件でも、融資期間しだいで判定は正反対になります。築古の物件では、「この利回りなら買い」と判断する前に、金融機関で何年の融資が付くかを確認してください。
ほかに確認したいこと
数字の判定には入っていない、次の3点も確認が必要です。
- 駅徒歩18分の空室リスク: 空室率10%は仮定です。駅から遠いファミリー物件は、募集に時間がかかることがあります。BER 59.8%なので余裕はありますが、周辺の空室率と募集期間は確認しましょう
- 大規模修繕: 築36年のRC造5階建ては、外壁・屋上防水・給排水管・(あれば)エレベーターの更新時期です。運営費の自動見積もりには大規模修繕が十分に入っていないため、修繕履歴と今後の予定を確認しましょう
- 想定賃料と現況賃料の差: 掲載の利回りは想定賃料ベースです。レントロール(現在の賃料一覧)で、各戸の実際の家賃と入居状況を確認しましょう
この物件の条件で、自分でも判定してみる
上の物件価格・賃料・融資条件を入力した状態でPropilarが開きます(登録不要)。返済期間を11年・15年・20年と変えて、どこで判定が変わるか試してみてください。所在地を入れると地域需要も含めて判定できます。
この条件でPropilarを開くまとめ
- 東所沢駅 徒歩18分・1億4,500万円のRC造1棟マンション(2LDK×18戸・表面利回り9.84%)を、融資9割・金利2.5%・25年で判定すると 「収支良好」
- DSCR 1.59、BER 59.8%、月34.8万円の黒字。K%基準でもレバレッジは有効
- ただし残存耐用年数の11年で借りると、月19.9万円の赤字で「リスク要因多い」に転落する
- 築古物件の判定は、融資期間の確認が先
シリーズでは今後も、実際に掲載されている物件の数字で「買っていいか」を判定していきます。